

琳琅 No.175 2022年7月号より②
| 海の音そこには母の下車駅が | 姫野 彩愛 |
| 潮騒の聞こえる駅のホームに降り立ったのは、若き日の西条眞紀さんである。そこで待っていたのは長町一吠青年。やがて二人は結ばれ、姫乃彩愛という新しい生命の輝きを見るのだ。主情に偏りがちな題材を、冷静沈着な表現意識を以て追懐の念の滲んだ映像美を見せてくれた。この句を始め、豊穣な感性を活かす表現力は確かで、七句全体を推称したくなった。「川柳は中年の文学である」と云った先達(山村裕)がいたが、彩愛さんはいま、川柳作家としての充実期に入ったのではないか。名付け親でもある一吠さんも、彩愛さんのこの成長ぶりには目を細めているに違いない。〈細川 不凍〉 | |
| 雲を追う瞳の奥のボヘミアン | 氈受 彰 |
| 大空を流れてゆく雲に漂泊の思いを重ねている。「瞳の奥のボヘミアン」には、深部で渇望しているような響きがある。西行や芭蕉のように、自由に旅をしたいという思いなのであろうか。コロナ禍というご時世であれば、この思いはなおさら募るものに違いない。〈吉見 恵子〉 | |
| 虹色の箱には懺悔とほほえみと | 佐々木彩乃 |
| 作者には大切な箱があり、種種を詰めている。他の人には見せられない自身の本音を入れる箱。日常のつぶやきも悔いもそっと蓋をすると虹色に輝いている。誰しもが持つ虹色の箱は、自分の心の中の秘するものだろう。〈伊藤 寿子〉 | |
| 遠い瞳の奥へ奥へと降る明日 | 岩崎眞里子 |
| 暗がりの一本道を行く孤高 | 林 勝義 |
| 梅サワー含み笑いの自画自賛 | 岩渕比呂子 |
| 流れの底のたゆたうことば掬う旅 | 吉田 浪 |
| 我が臓に癌芽吹きたり朧月 | 田中 澄雪 |
| 落丁や げにも優しき青き独楽 | 西条 眞紀 |
| 子は生さず実は結ばずも八重椿 | 谷沢けい子 |
| 種ひとつ芽ばえ訃報を見届ける | 伊藤 寿子 |
| 春十六夜ひと刷毛の雲友に文 | 福田 文音 |
| 傭兵がぬっと出て来る霧の村 | 古谷 恭一 |
| 岬まで歩き通して如是果 | 富永 恵子 |
| 逆行の歪積み木が崩れゆく | 野邊富優葉 |
2022.8.10
























