

新思潮 No.137 2016年3月号より③
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―奈良吟行(2015年10月11日)― 昨日の研修句会に続き二日目は奈良吟行。秋篠寺、浄瑠璃寺、般若寺…と美しい名前の寺々を巡る一日が始まる。参加者十五名を乗せてバスはまず秋篠寺へ。 |
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| 訪ねし寺の秋を並べて秋の扉を | 山崎夫美子 |
| ◇秋篠寺 南門を一歩踏み入ると、こんもりとした森の空気に包まれる。参道と言うより森の中の小径を行くよう。明け方の雨に濡れて、苔は緑に美しく輝やいている。 | |
| 混沌にこんもり苔を着せてみる | 西田雅子 |
| そもそもを辿る両手に桐の箱 | 和田洋子 |
| 薄暗い本堂に入ると、間近に一列に並んだ仏像を見ることができる。本尊の薬師如来を中心に、日光・月光菩薩、十二神将、帝釈天、不動明王…中でも一番逢いたかったのは伎芸天。わが国唯一の伎芸天像である。エキゾチックで神秘的な姿は、堀辰雄が「東洋のミューズ」と称賛したのも納得できる。 | |
| 伎芸天に流浪の旅をささやかれ | 岡田俊介 |
| ◇浄瑠璃寺 思いのほか小さめで質素な山門。山門をくぐると、池を中心に浄瑠璃寺の庭園が広がる。拝観順路は、薬師仏がまつられている三重塔から、池を挟んで、西方浄土にある阿弥陀堂へ。九体の阿弥陀様が一列に並んで壮観だ。 | |
| 浄瑠璃寺孤身をおけば騒ぎだす | 矢本大雪 |
| 此岸より阿弥陀如来を偲びけり | 鮎貝竹生 |
| お堂を出て池の周りをぶらぶら歩いていると、ところどころに秋の花が。花の名前に疎い私は、こんなとき花に詳しい人がうらやましい。 | |
| 秋天へにゅうと千年蝸牛 | 芳賀博子 |
| ジャリジャリリ結界辺りの金木犀 | 岩崎眞里子 |
| ◇般若寺 コスモス寺として有名な般若寺は東大寺の北、奈良坂を上りきったところにある。ここからは市内を見下ろすことができ、東大寺の屋根がきれいに見えるビューポイントでもある。奈良時代の都人の喧騒がここまで立ち上ってきそうだ。 | |
| 奈良坂の秋からころと東大寺 | 福田文音 |
| 般若寺は旧京街道に面して、すぐそばまで民家がある。バスを降りて少し歩くといきなり楼門(国宝)が現れる。楼門をくぐると一面のコスモス。正面には本堂が、コスモスの海の波間に揺れる船のように浮かんでいる。そばには十三重石宝塔(重文)。 | |
| 石を積むあるかなきかのぬくもりを | 八上桐子 |
| 秘仏小さく平城京は秋の風 | 坂根寛哉 |
| ◇東大寺戒壇堂 珈琲タイムのあとは戒壇堂へ。戒壇堂には多宝塔と四天王(持国天・増長天・広目天・多聞天)が安置されている。 | |
| 筆先に言葉したたる広目天 | 斉藤和子 |
| ◇新薬師寺 お堂の中央には薬師如来(国宝)が安置され、その周りを等身大の十二神将(国宝)が護衛している。どれも濃いキャラで迫力満点。如来様も心強いことだろう。 | |
| 寺巡り我も仏陀の子であるか | 福井陽雪 |
| 仏像に詳しくなくても、花の名を知らなくても奈良は楽しい。奈良は優しい。 やまとはまほろばーまたあの苔むす美しい木立を抜けて伎芸天に逢いたいし、コスモスの風にも吹かれたい。奈良をまた好きになった一日であった。 | |
| 深い水動かさぬよう古都を去る | 寺田 靖 |
文・西田雅子 2016.4.30
























