

琳琅 No.179 2023年3月号より①
| にんげんに躓き注ぐ カモミール | 吉田 浪 |
| 浪作品の一句目、〈語らいは遥けく声なきペアカップ〉が本来の彼女の持ち味(繊細な抒情)だと思うが、今回は本格川柳的な味わいのあるウイットに富んだ掲出句に興味が湧いた。人間社会の営み(殊に人間関係の複雑さが想像される)に疲弊してしまった精神を、リラックス効果のあるカモミール(和名カミルレ)のハーブティーで癒すのだ。人間の不可思議さや掴み所のなさを象徴するかのような平仮名表記「にんげん」、そして一時空けによって際立たせた「カモミール」という具合に、句を創るに当って細心の配慮を施している。〈細川不凍〉 | |
| 二日二晩 雪の衣や火の衣 | 吉田 州花 |
| 一連の句より、作者はインフルエンザに罹患していた模様である。その二晩の高熱の苦しみを、「雪の衣や火の衣」と調子よく臨場感溢れる表現で詠んでいる。無駄のない勢いのある句で際立っている。〈吉見恵子〉 | |
| 木枯らしの第一走者は風小僧 | 岩渕比呂子 |
| 軽快なリズムよろしく、颯爽と現れたのは「風小僧」。比呂子句の特長であるメリハリの良さが十分に活かされている。NHK『みんなの歌』で出会った『北風小僧の寒太郎』(堺正章歌)が浮かぶ。両者共、前向きの姿勢が活力を呼ぶ。〈細川不凍〉 | |
| 始まりは一滴さよならは幾重にも | 姫乃 彩愛 |
| ぼたん雪湯宿のけむり姥盛り | 富永 恵子 |
| 画集には月の光を閉じ込める | 岡田 俊介 |
| 花火ひゅるひゅる誰かを待って冬の使者 | 大谷晋一郎 |
| 結局はこうなる大鍋に煮しめ | 野邊富優葉 |
| きょうは雨あしたは富士山樹木葬 | 笹田 隆志 |
| 張り詰めるいのちG線上のアリア | 新井 笑葉 |
| 何時迄も満点なんて秋の月 | 林 勝義 |
| 凍土目醒める防人の長い語尾 | 伊藤 寿子 |
| 血の色も薄れ枯れゆく寒椿 | 松村 華菜 |
| 墜落のここはどこだか古代羊歯 | 古谷 恭一 |
2023.3.10
























